第二話
「Laehtier」

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 「……ここは………」

銀髪の少女が静かに呟く。まだ自分の身に起きたことをはっきりと把握できておらず、

まわりをキョロキョロと見回すことで気を紛らわすことしかできないでいる。

 その時、彼女は自分の体に奇妙な違和感があることに気が付いた。

「え?ウソ……パスが繋がってる。」

 それは生身の人間にはありえないものであった。純粋な魔力だけのパスなら、魔力の供給のために結ぶことはある。

しかし、『生命力の供給』となると全く話は別物である。

生きている人間の生命力を100とすると、肉体の維持に30、精神の維持に30必要となる。残りの40は予備として、使用されずに残される。

その余るはずの生命力が自分に流れ込んでいるということは、生命力のストックが不足しているということに他ならない。

 召喚魔法によって呼び出された魂は、精神を維持するために最低限必要な30の生命力を持っているため、契約者が供給する生命力は肉体維持の30。

その30の生命力が自分に流れ込んでいることで、彼女は自分の置かれている状況を把握した。

「そっか、つまり。」

壁にもたれ掛かってぐったりとした少年を見る。


「半分『生き返った』ようなものね。」

まだ内心釈然としないものがあったのだが、倒れている『契約者』に詳しく話を聞くため、気長に彼の目覚めを待つことにした。




 「ん…」

気怠そうな声を洩らし、舜夜は意識を取り戻した。

「あ、目醒めた?」

それに安心したように優しく微笑む少女を見て、舜夜は訝しげな顔をする。

「お前…誰だ?」

「誰って、貴方が勝手に呼び寄せておいてその言い方はないんじゃない?」

むっ、とした表情を見せると、舜夜はさらに険しい顔をした。

「呼び寄せた…?」

「そう、貴方が私を呼び寄せて、契約を結んだの」

聞き慣れない言葉に、舜夜の当惑はさらに深まる。

「何で俺がお前を呼ばなきゃならないんだ。それに、契約って何なんだよ!」

つい、激昂してしまう。その時初めて彼はまじまじと彼女の姿を見て、その人形の如く均整のとれた貌に見惚れてしまった。

「そんなこと私に分かると思う?いきなりわけも解らずこんなとこにいて、困ってるのはこっちの方…ん、何?じっと私の顔見ちゃって。」

顔を見られていることに気恥ずかしさを覚えたのか、少女はその雪色の頬をほんのりと赤らめ、目を逸らした。

「え…?あ、悪い。」

たまらず舜夜も目を逸らし、二人の間にしばし気まずい沈黙が流れる。

 先にその沈黙を破ったのは少女であった。

「あの、一つ聞きたいことがあるんだけど、いい?」

そう言うと、彼女の目が少し険しいものに変わった。


「貴方、なぜ私を現界できたの?」


それは、明らかに異質な問いであった。舜夜は質問の意図が読み取れず、口籠もってしまった。

「…まあ、いいわ。とりあえずこの質問は置いておきましょう。見れば色々話さなきゃいけないこともあるみたいだし。」

少女は軽く微笑み、その名を明かす。

「まだ名前、言ってなかったよね。私はレティアっていうんだ。貴方は?」

「俺は舜夜、だよ。」

シュンヤ、と反芻するように繰り返すと、年相応の笑みを浮かべた。

「うん、あなたらしいいい名前だ。じゃあシュンヤ、でいいよね?色々話したいこともあるし、お茶でも飲みながらゆっくり話そうよ。」


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